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2016年11月18日金曜日

相変わらずのダメ会社 日本航空(JAL) 植木義春・社長


 先日、某旅行会社に旅行の相談に行き、その際に、ついでに、カンボジアのパンフレットにも手を伸ばしてみた。カンボジアには以前から行きたいと思っていた。正確な年も判る、1985年の夏からである。行きたい行きたいと思っていて果たせなかったのは、治安が不安だったり、都合がつかなかったり、いろいろとあるのだけれども、ふと、30年ものあいだ希望していた旅行をついにやってみようと思い切ったのは、旅行は「勢いでするもの」であり、また別の機会に行こうなどと思っていてはいつまでたっても行けない、ということを長い人生を生きて来て(?)知らされたからである。

 その旅行会社のパンフレットを見て、あれこれ考えて一番適当だと思うものを、係の女性に示した。もちろん、係の女性も売り上げアップのために、喜んであれこれパチパチとパソコンを打って話を進めてくれた。しばらくしてから、しかし、彼女の(私と同じくらいの年齢と思われる婦人)顔が曇った。そして、

「すいません、この旅行、お一人での参加はできないことになっています」
「だって、ここに一人部屋の追加料金が.....」
 と私は声を漏らしたけれども、別に不満を感じたわけではない。
 慣れている、のである。
 旅行会社のパンフレットを覗いてみると、
「いかに単独旅行者が嫌われているかが理解できる」。
 この一人部屋追加料金というのも、恐らくは、3人参加で予備ベッドが部屋にない場合を考慮しての、「あぶれ者一人の追加料金」という意味なのだろう。
 明らかに金持ちカップルを当て込んでいると思われる、ゴージャスなヨーロッパ旅行のあるパンフレットには笑ってしまったことがある。
 カップルなら一人60万円くらいなのだけれども、「お一人様参加の場合」(この場合は単独でも参加できる)、追加料金が40万、とかになっている。6泊8日くらいの旅行だから、「追加のホテル代」を一泊あたり6万円払え、ということになり、普通はありえない。....つまりは、単独旅行者の参加を遠回しに拒否している、あるいは、バカ高い金を積まなければ単独参加者は受け入れないというイヤガラセ、なのだろう。この旅行は楽しい幸福なカップル(夫婦ものであれ不倫ものであれ)のためのものであり、一人の男とか一人の女は参加させないよー、ということなのだろう。

 そんな旅行パンフレットは、しかし、珍しくもないのである。だから、そのカンボジア旅行のパンフレットのどこにも

「単独旅行者参加はご遠慮願います」
 と記載がないのに、旅行会社の係員がパソコン操作であれこれやって申し込み情報を打ち込んでいっているうちに、ついに、「一人参加者拒否」という隠されていた秘密が判明したとしても、別にいつものことだと私は思っただけのことである。

 ところが、係員は、

「これはおひとり様でも参加できます」
 と言って、別のパンフレットを私の目の前に出した。
 間違いなく、一人で、単独で、参加できるという。何しろ、一人しか参加者がいなくてもやる、というツアーなのである。
 3泊5日。もちろん、アンコールワットやアンコールトムの観光もできて、東洋のモナリザとも東洋のビーナスとも讃えられている彫像で有名なバンテアイスレイにも連れていってくれるという。
 一人で参加できるのなら、それ以上は何も求めない。
 何十人かのツアーになって、その参加者が私以外全員カップルだとしても、そんなことはどうでもいい。これで念願のカンボジアに行ける。
「じゃぁ、それ、申し込みます」
 と私は喜んで弾んだ声をあげた。すると、係員はこう告げた。
「この旅行はJALパックになります」
「えーっ!」
 驚き呻きの声が私の喉から漏れた。

 JALパックには、一度、ヒドイ目に遭っている、というか、遭わされている。加えて、日本航空には、何度も何度も「煮え湯を飲まされている」。

 このクズ会社は、一般の名もない貧乏人旅行者など、どう苦しめてもいいと思っている。
 だから、もう10年以上も前から、この会社の飛行機にはできるだけ乗らないようにしてきた。恐らく、この10年以上、一度も乗ったことがないか、あるいは乗ったとしても偶発的に一度くらいだろう。
 学会で東京などに出張に行くときには、事務が航空券を用意してくれる。事務の女性から、
「航空券、JALとANAのどちらにしますか?」
 と毎回訊かれて、毎回必ずこう答えている。
「ANAにしてください」と。


 宮脇檀、という男性建築家がいる。もう鬼籍に入っているけれども、以前私は彼の著作を何冊か読んだことがある。この建築家は食道癌で亡くなっていて、その闘病記や、病気とは関係のない随筆などを読んだ。その随筆集の中で、宮脇は、娘を日本航空に入れるための苦労話を書いている。有名人で人脈豊富な宮脇ではあったものの、日本航空に影響力のある人物とコンタクトを取り、娘の入社を依頼し、あれこれそれこれと「手配」するのが大変だったと書いている。念願叶って、娘はコネ入社を果たし、日本航空の男性社員と結婚する。
 宮脇は建築家としては有能なのだろうけれども、社会人としては常識を欠き、娘を日本航空に入れるために奔走する自分の姿をユーモラスに描くことがどれほど実際には醜悪なことであるのか、そんなことに気づかない。天皇のエアラインとして、ナショナルフラッグのエアラインとして、どれほどこの会社が「高慢傲慢」であるかについてほんの少し触れていたとしても、自分の娘をコネ入社させてくれるのだから、基本的にはこの航空会社に感謝しているのである。
 なぜこれほど宮脇まゆみですら「手こずった」のか?
 それは、この航空会社にコネ入社する有力者のバカ息子アホ娘がたくさんいたから(いるから)である。各界の名士とコネを持つ宮脇ですら、これほど難しい。宮脇以上の各界の有力者たちが、あらゆる上流階級のコネを使った、バカ息子アホ娘をこの会社に捻じ込もうとしているため、宮脇クラスの著名人の場合は「一汗かかなくてはならない」のである。その汗が、どんなものだったのかは、今となっては知る由もない。

 JALパックでカンボジア?

 私の頭の中に、悪魔と天使が現れた。いや、惰性と理性の二人が現れた。惰性、というのは、全てのものごとはなるようになるというズボラでテキトーな生き方を「提唱」する悪魔であり、理性とはそのままに理性的に物事を考えて判断しろと教える天使である。
 惰性は言う。
「旅は思ったときにやらなきゃ、結局いつまでたっても行けないことになるんだから、JALパックでもいいじゃないか、行っちゃえ行っちゃえ」
 それに抗して理性は諭す。
「一体何度日本航空に煮え湯を飲まされたら気が済むのか。わざわざ不愉快になるために旅行をするつもりなのか。JALパックでカウアイ島の空港に降り立ったとき、迎えに来ているはずの係員がいなくて、どれだけ苦しんだのか。翌々日に空港に現れたあのJALパック現地係員のバカ女が、謝罪するどころかお前を頭ごなしに空港の中で𠮟りつけてきたのを、もう忘れたのか。あんな最低の旅をまたしたいというのか。いい加減に目を覚ましたらどうだ。58年生きてきて、まだまともな判断力を持てないのは情けないことだと知るべきなのだよ。」
 惰性は平気で続ける。
「いいじゃん、どうせ今度は一人なんだし、最低の旅、ジョートーじゃん。もう58年も生きてきてるんだから、今更怖いもんなんてないじゃん。勢いだよ、勢いで今行っとかなきゃ、もうきっと行けないぜ。」
 理性が何か言う前に、私は思い切りバットを振って、この理性天使を空の彼方へ弾き飛ばした。漫画のシーンのように、アンパンマンにアンパンチを食らったバイキンマンのように、空の彼方へ飛んで行った。
 惰性が、「グッジョブ!」と親指を立てて歯をむいて笑う。
「JALパック、いいじゃないですか、いいですよ、それ、申し込みますよ」
 私のそんな声がしたことに、一瞬遅れて私の意識のほうが気づいた。
 その声は、惰性悪魔の口調にいつの間にかなっていて、矢でも鉄砲でも持ってこい、と言っているような自暴自棄な響きがした。


 というわけで、JALパックで、私はカンボジアに行ってきたのである。

 惰性悪魔の声は、半分正しくて(勢いで行っておいたほうがいい)、半分間違っていた(最低の旅ではなかった)。
 まぁ、その詳しい話は、長いので、何度にも分けて、これから書いてゆく。


 土曜の早朝に札幌を発つ。その日は、国立新美術館でダリ展を観てから、山種美術館と根津美術館の特別展に足を延ばし、上野のホテルに泊まる。

 日曜日は、国立博物館で平安の秘仏展と、白隠・禅仏教美術展を堪能してから、再び国立新美術館に行き、日展を観る。午後4時からの入場料は300円になるので、それを利用する。このような数々の傑作を展示する(皮肉)展覧会を、正規の高い料金を払って観る気にはとてもなれなかったため。洋画と日本画をじっくりと観て、日本の恥画家の、観る者を脱力させるようなつまらない絵も(個人の感想です)じっくり眺めてきた。
 日展を観てから、地下鉄で浜松町に出て、夕食を取り、モノレールで羽田まで。ずいぶん時間があったので(JALパックのブースが、この旅行の参加者を受け付ける開始時刻は午後11時30分)、羽田空港国際線の建物を、隅から隅まで見物した。

 さて、4時間近くの時間潰しを終えて、そろそろJALパックのブースで受付をしようかと思いながら、比較的人の少ない座席に座っていた午後11時30分の2,3分前のこと。羽田空港国際線ターミナル全体に(少なくとも搭乗関係の建物全体には)、私の名前が流れた、それも2度に渡って。

「....のマツウラアツシ様、×××の15番カウンターまでお越しください。繰り返します、....のマツウラアツシ様、.......」
 正確には、私の後に、もう2人の名前が(姓が一緒だから夫婦だと思った・実際に夫婦なのを後で知ることになる)呼ばれた。
 繰り返すけれども、旅行日程に記されているブースの受付開始時刻の2,3分前のことである。何しろ私は23時30分ちょうどにブースの前に立つつもりで準備していたのだから。
 JALパックの受付ブースまで急いで行く。場所は最初にこの建物に入った4時間近く前に確認していたので、そしてそこからさほど離れてはいない席に座っていたので、ほんの10秒ほどで駆け付けた。
 受付に立っていた私と同じ年齢くらいの女性が、私に「eチケット」という、2枚の薄緑色のA4紙を渡して、
「これを持ってJALのカウンター××番に行ってください。そこで、ベトナムまでの航空券と、カンボジア(シェムリアップ)までの航空券を貰ってください」
 と私に向かって言う。あと、旅行日程冊子について何か話していたけれども、忘れた。それでもその女性と3分ほどはやり取りして(その間にも、別の2人の客は現れていない、私一人だけだった)、すぐに言われた日本航空のカウンター、ベトナムのホーチミン空港(正式名は別)に飛ぶ飛行機の搭乗受付カウンターに行く、と、そこには誰もいない。
 少なくとも、エコノミークラスの受付には、誰一人いない。
 飛行機の出発時間は25時30分。
 2時間前である23時30分には、恐らく、搭乗受付を開始していなくてはならなかったのだろう。呆然として無人のカウンターの前に立っていると、ドサドサという背後からの足音とともに、3,4人の地上職員・美人のおねえさん、おばさん、たちが駆け足で登場。恐らく23時35分頃。
 ホッとして、美人のおねえさんに、さっき貰ったeチケットとパスポートを渡す。
 カチャカチャカチャ、とキーボードを叩いていた、その日本航空の地上美人職員は、私に向かって、
「アンコール航空の搭乗券を渡してください」
「はぁ? 持ってませんよ」
「ホーチミンからシャムリアップに向かうアンコール航空の搭乗券、持ってませんか?」
「あの、私は、あそこのJALパックの人に、ここでホーチミンとシャムリアップへ向かう2枚の搭乗券を貰うように言われたんですけど」
 美人の職員は無言でキーボードを叩き続ける。
 私も無言で前に突っ立っている。
 カチャカチャカチャという音。
「アンコール航空の搭乗券、渡されませんでした?」と美人職員が再び言う。
 すると、少し離れた場所に立っていたおばさん地上職員が、まるで私なんか存在しないようなぞんざいな口調で、この若い美人に、
「これ、2枚あるから、いいんじゃないの」
 と、eチケットを指しながら耳打ちする。耳打ちになっていなくて、私の耳にも筒抜けなのだが。
 美人職員は、カチャカチャカチャと再び、私には何も言わずにキーボードを叩き、
「JALのメンバーズカードはお持ちですか?」
「ずいぶん前に作ったけど、まったく使っていません」
「マイルをお付けします。電話番号をいただけますか?」
 とかなんとか、話が続き、結局ホーチミンまで行くマイルが付いたようだった。JALには乗らないように気を付けているし、今後もできるかぎり乗らないからマイルなんて付けなくてもいい、という本心は言う必要もないと思った。
 結局、ホーチミンからシェムリアップまでのアンコール航空搭乗券の話は有耶無耶になり、JALのホーチミンまでの搭乗券一枚を渡された。

 しかし、JALパックのブースのおばさんは、確か、ここで(JAL搭乗受付カウンター)2枚の搭乗券を貰うように言ったように記憶している。それを確かめるため、そのままさっきのブースまで歩いてゆくと(すぐ近くである)、ブースの上には「終了しました」みたいな文句の書かれた札が置かれ、照明は消されて、おばさんはハンドバックを手にそこからそそくさと消え去ろうとしていた。

 これでやっと、私も、「受付前に名前を空港全体に放送されて呼び出された理由」というものが理解できた。要するに、さっさと自分が帰りたいから、受付時間前から客を放送で呼び出した、ということなのである。10分、せめて5分、いや1分なりとも客を待ってから放送をかけるというのならともかく、受付時間前に客の名前を羽田空港国際線ターミナルで2度も響かせたのは、おばさんの自分のためだったのである。
 私は、呆れてしまって、アンコール航空の搭乗券のことはすっかり忘れてしまい、皮肉が先に口をついて出た。
「あれあれ、ずいぶんお早い店じまいなんですね。受付時間前に呼び出して――」
「あれは、たまたま私がいたからですよ」
 と、頓珍漢な受け答えをして、おばさんはそのまま顔を背けて立ち去ってしまった。
 これが、日本航空の子会社・JALパックのやりかた、なのだろう。毎晩毎晩、深夜便の予約している数が少なければ、空港放送を使って時間前に呼び出す(呼びつける)ことを平気でしているのだろう。まさか、10人20人と予約客が多いときにもこんな「ふざけたやり方」をしているとは思わないけれども。

 別に羽田空港国際線ターミナルで私の名前が呼ばれたことに不満があるわけでも困惑しているわけでもない。
 ただし、不倫してJALパック利用・深夜便利用の男女は、大音量で羽田空港国際線ターミナルに姓名が2度呼び出されることを覚悟した方がいいだろう。というより、「何の落ち度もないのに名前を放送される」のを好まない人は、プライバシーを守ろうという意識のかけらもないJALパックでの、深夜便の利用はもう一度考え直したほうがいいと思う。
( 余談だけれども、こんなことを考えていると、御巣鷹山に墜落した日航機に、不倫していた全日空職員の男女二人が搭乗していて、ともに死亡したことを思い出す。どこで何が起こるかは、誰にも予測はつかない。この二人が全日空機に乗っていれば、不倫はばれたかもしれないけれども死ぬことはなかっただろうに。 )


 日本航空エコノミークラス搭乗受付の美人職員も、仕事の内容を何も理解していないようだし、その後ろに立っていた・一緒になって遅刻してきたあのおばさん職員も、客の前でまるで自分はinvisible cloakの中にでもいるつもりであるような、不思議な(傲慢な?)対応をしていた。こういったのが、日本航空の地上職員の常なのであろう。

 後から考えれば、羽田で一体全体どうやって、アンコール航空が発券するべき搭乗券なるものを手に入れることができるというのだろうか? そんなことはシロウトだってわかりそうなことであるけれども、この日本航空の地上美人職員は思いつきもしないようだった。もっとも、バカな私は、この美人職員に、アンコール航空の搭乗券を出してください、と責め立てられても(実際私に非があると決めているような最初の口調だった)、その当然のことを思いつかなかった。

 これだけで終わっていたなら、私は何もこんなブログのエントリーをアップすることもなかったかもしれない。
 しかし、ホーチミンの空港では、これ以上の「事件」が私を待ち構えていたのだった。


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